アルミニウム合金 の熱処理法として、T4、T5、T6処理などがJISで規定されている。
鉄鋼材料では焼入れのマルテンサイト変態によって組織が微細化され強度が上昇するが、アルミニウム合金では鋼材のような変態がない。そのため、溶体化処理により515~550℃で加熱を行い、合金元素をアルミ中に溶け込ませ、微細な金属間化合物として析出させ硬度を上げる。アルミニウム展伸材ではA2000、A6000、A7000系、鋳物材ではAC2A、AC4B、AC4C、AC4D、ダイカスト材ではADC3、ADC12、ADC14などが熱処理型となっている。時効処理はT4の自然時効=常温時効とT6の人工時効=高温時効(焼き戻し)がある。
構成
【時効処理の種類】
T4(溶体化処理): 機械的性質の向上、耐食性の向上
T5(焼きもどし): 硬さおよび被切削性の向上、寸法の安定化の向上〈ひずみ取〉
T6(溶体化処理後人工時効硬化処理): 最高の強さの向上
T7(溶体化処理後安定化処理): 「過時効処理」:対象は7000系、T6より人工時効硬化処理(焼きもどし)の時間を2~3時間長くする。 T6処理材は、エンジン等で熱が加わると寸法が大きくなる「永久成長」という現象を生じ、部品の寸法が変化する。 対策として加熱されても寸法変化が少なくなるように時効処理の温度を高くしたものがT7材。 寸法は安定するものの、T6材に比べて強度・硬さは劣る。
時効処理 | T4 | T5 | T6 | 非熱処理型 |
焼き入れ | ○515~550℃水冷 | x高温塑性加工 | ○515~550℃水冷 | x |
焼き戻し | x常温時効96H | ○250℃x1H | ○170℃x7.5H | x |
特性 | 靭性が向上し、耐食性も改善される。 | 強度が向上し寸法が安定化する。 | 強度や硬さが増大するが、伸びや衝撃値は低下する | 熱処理不要 |
展伸材 | A6061(Al-Mg-Si) 丸棒 A2017(Al-Cu-Mg) ジュラルミン A2024(Al-Cu-Si) 超ジュラルミン | A6063(Al-Mg-Si) パイプ材 | A7075(Al—Zn-Mg) 超超ジュラルミン | A1000(Al) A3000(Al-Mn) A4000(Al-Si) A5000(Al-Mg) |
鋳物材 | AC2A(Al-Cu-Si) AC4B(Al-Si—Cu) AC4C(Al-Si-Mg) AC4D(Al-Si—Cu-Mg) | AC3A(Al-Si) AC7A(Al-Mg) | ||
ダイカスト材 | ADC3(Al-Si) ADC12(Al-Si—Cu) ADC14(Al-Si—Cu-Mg) | ADC1(Al-Si) ADC5(Al-Mg) ADC6(Al-Mg) |
材質
ワーク材:アルミニウム合金
工法
治具セット→脱脂洗浄→条件セット(温度、時間、油温等)→熱処理炉(入炉→昇温加熱→焼入→焼き戻し→出炉 )