自動車部品は機械式制御に代わって、ECU（電子制御ユニット）を搭載し、ソフトウェアによる電子制御を行うシステムが増加している。
現在では一台の自動車に搭載されているECUの数は多い場合には100個を超える車種もあり、1,000個以上の半導体チップが搭載されていると言われている。
エンジンやステアリング、ブレーキなどの「走る、曲がる、止まる」という基本的な車両制御に加えて、ドライバーのサポートの分野では、先進運転支援システム（ADAS）の各種センサーのセンシングデータの解析が重要になっている。
また、非重要保安部品系では、カーナビゲーションのマルチメディア化、情報通信化などによって、ソフトウェアのサイズが急激に増加しており、一台あたりのソースコードの行数は2000年当時の約100万行から2010年には500～1,000万行、2015年は1億行、2020年には2億行程度に達している。今後もさらに急増していくと言われ,深刻な状況になっている。車両のソフトウェアはWindows OSが6,000万行程度なので、他のデバイスに比べても圧倒的にソースコードの行数は多い状態となっている。
リコールの届けが必要のない分野のカーナビなどではシステムダウンやシステムロックなどの不具合は日常的に起っている。クルマが主に機械部品で構成されていた当時は、生産が終了するまで、量産図の変更は、通常行われないのが正常だったが、カーナビゲーションのソフト変更は頻繁に行われている。毎月のようにバージョン変更を行い、バージョン番号は3桁を使用している。例えばVer.2.3.9の表示の場合、1桁目は大変更（メジャー）、2桁目は中変更（マイナー）、3桁目はパッチ小変更（軽微なバグ等）と規模に応じて表示されている。このように、異常を異常とも思わない状況になっている。
また、車両がソフトウェア化されて以降、リコールが増えている。昔は設計に起因するリコールはほとんどなかったが、近年では、重要保安系のECUでさえもソフトウェアの不良によるリコールが増えている。対策もソフトウェアの変更であり、すなわち設計ミスが原因となっている場合が多くなってきている。
さらにSDV化の流れもあり、無線通信OTAによるアップデートでは、仕様向上とともに、バグ（設計ミス）と称してソフトを修正する技術動向が懸念されている。場合によっては、ドライバーの安全を担保するリコール制度を蔑ろにすることにもつながる。自動車においてはバグ（設計ミス）などという、おろかな用語は言葉の存在そのものがあってはならない。バグ（設計ミス）のないソフトウェア開発が求められる。
