熱処理とは

□熱処理の種類

(全体)焼入焼戻
(表面)浸炭焼入焼戻、浸窒焼入焼戻、塩浴軟窒化処理
(部分)高周波焼入焼戻、火炎焼入焼戻、レーザー焼入
(ベーキング)電気メッキの水素脆性除去、無電解化学ニッケルメッキの硬度アップ

(アルミ)時効処理

■鋼材の熱処理

金属などを加熱・冷却により素材の硬度、強度、靭性を変化させる役割。自動車部品は適切な熱処理が要求される。全体焼入れ、表面焼き入れ、部分焼入れに区分される。またベーキング処理は高炭素鋼の電気メッキ後の水素脆性除去として3時間以内200℃程度の低温処理を行う。

サイズ:

10㎜~1000㎜

材質:

鋼材

工法:

治具セット→脱脂洗浄→条件セット(温度、時間、油温等)→熱処理炉(入炉→昇温加熱→焼入→焼き戻し→出炉 )

<加熱・冷却条件>

焼き入れ 低温焼き戻し 高温焼き戻し 焼きなまし 焼きならし ベーキング
HQ HT HT HA HNR  
ワーク 高炭素鋼 合金鋼 高炭素鋼 高炭素鋼 焼き入れ部品の電解メッキ後処理
加熱 800~850℃ 1時間保持 150〜200℃ 1時間保持 550〜650℃1時間保持 800~850℃ 800~850℃ 200℃ 3時間保持
冷却 水冷数秒(550℃まで急冷)→空冷 炉冷で徐冷 空冷 550℃まで炉冷で徐冷→空冷 空冷 空冷

焼き入れ

鋼の硬度を上げる熱処理。 JISの加工記号では「HQ」。硬度は鋼に含まれる炭素量で決まる。熱処理方法は炭素鋼の場合では、鋼を組織の構造が変化する変態点温度(700℃)より高い800~850℃まで上昇させ、所定時間置いた後、水冷で数秒急冷し、その後空冷する。これにより、組織がマルテンサイト変態によって微細化され強度が上昇する。高炭素鋼では、そのままでは脆く割れなどが生じやすいため、焼戻しを行う。

焼き戻し

鋼を強靭にする熱処理。JISの加工記号では「HT」。焼き戻しを行うかどうかはS35C以上の中炭素鋼など、鋼に含まれる炭素量で決める。熱処理方法は、焼き入れ後さらに再加熱して硬くて脆い「焼き入れマルテンサイト組織」を粘りのある「焼もどしマルテンサイト組織」からトルースタイト>ソルバイト>パーライトなどの共晶組織にする。

焼き戻し方法は低温焼もどしと高温焼もどしがある。低温焼戻し温度は150〜200℃で1時間保持しその後炉冷で徐冷する。一方高温焼戻し温度は550〜650℃の臨界区域の高温で1時間加熱後、空冷する。靭性が必要な歯車やシャフトの製造に用いられる。

◆焼きなまし

鋼を軟らかく加工しやすくする熱処理。JISの加工記号では「HA」。熱処理方法は炭素鋼の場合では変態点温度(700℃)より高い800~850℃まで加熱し、臨界区域(550℃)以下まで炉冷で徐冷する。その後炉から取り出し空冷する。加工性を改善する。

◆焼きならし

加工によって不安定となった鋼の組織を均一な標準状態にする熱処理。JISの加工記号では「HNR」。熱処理方法は炭素鋼の場合では変態点温度(700℃)より高い800~850℃まで加熱し、組織をオーステナイト化させ、その後、臨界区域(550℃)以下まで炉冷で徐冷後、炉から取り出し空冷する。鋼の標準組織(柔らかい層状パーライト組織)が得られる。

◆ベーキング

ベーキング処理は、200℃の炉中で加熱して水素を追い出す。 メッキによって金属が水素を吸収してもろくなる現象を水素脆性という。高強度鋼部品が静的な負荷応力を受けた状態である時間を経過したとき突然脆性的に破壊する「遅れ破壊」につながるため危険。そのため、焼入れ鋼の亜鉛メッキなど水素脆性の危険のある製品は、通常めっき後に、脱水素処理としてベーキング処理を行なう。

◇金属組織用語

◆フェライト:地鉄、α鉄とも呼ばれる。焼き入れ前の柔らかい組織。硬さはHv70~100程度

◆セメンタイト:Fe3C、金属間化合物。硬度は高くHv1200。

不安定な化合物で、900℃程度の温度で、長時間加熱すると黒鉛に分解する。

◆オーステナイト:高温に加熱したときに得られる組織、鉄に炭素が溶け込んだ安定な組織。

◆マルテンサイト:焼き入れで安定なオーステナイトから急冷する事によって得られる微細組織。フェライトに多量の炭素が固溶したもので、硬くてもろい。Hv500~850

◆ベイナイト:焼き入れで安定なオーステナイトから徐冷する事によって得られる組織。炭素がセメンタイトの形を取って、微細に析出しているフェライトからなる。バネなど、靭性が必要な製品に用いられる。

<焼き戻しで得られるフェライトとセメンタイトの混合組織>

◆トルースタイト:400℃に焼戻しすると、硬いマルテンサイトからセメンタイト(Fe3C)の形で炭素を吐き出す。硬さはHv400程度。

ソルバイト:550~650℃で焼戻しをすると得られる。セメンタイト(Fe3C)がやや粗大化し、トルースタイトよりもさらに凝集した組織。軟らかくショックに強いため、じん性が要求される機械部品に多用される。硬さはHv270程度。

パーライト:徐冷で得られる組織。鋼が変態点で生じた共析晶。組織はフェライトとセメンタイトFe3Cが薄い層で交互に並んだもの。炭素含有量が少ないほどフェライトは多くなる。硬さはHv240 程度。

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