ギア
歯車。歯をかみ合わせて動力を伝達する。自動車用途では使用部位によって最適化が求められ、精度、形状、材質、熱処理が異なり多様化している。
□自動車部位別ギア使用例
部品 | 形状 | 歯形 |
エンジンタイミングギア | 平歯車 | |
MTミッションギア 前進用 | はす歯歯車 | |
後進用 | 平歯車 | |
ATミッションギア サンギア | はす歯歯車 | |
リングギア | 内歯 | はす歯歯車 |
ピ二オン | はす歯歯車 | |
デフギア 駆動 | かさ歯車 | ハイポイドスパイラルベベルギヤ |
差動 | かさ歯車 | すぐ歯歯車 |
ステアリングギア ラック | 平行歯 | 平歯車 |
ピ二オン | はす歯歯車 | |
ワイパー モーター軸 | ウォームギア | |
ホイール | ウォームホイール | |
シャフト 軸 | スプライン(並歯、低歯) | |
穴 | 内歯 | スプライン(並歯、低歯) |
□仕様例
仕様 | 記号 | 寸法・公差 | 記号 |
歯形 | インボリュート | 歯先円直径 | Da |
転位 | x | 歯底円直径 | Df |
モジュール | m | ピン径 | |
圧力角 | α | オーバーピン径上限 | |
歯数 | Z | 下限 | |
ピッチ | P | 又はまたぎ歯厚上限 | |
基準円直径 | D | 下限 |
歯の大きさを表す単位として ISO(国際標準化機構)では、モジュールサイズを使うことが定められている。歯車の間隔は「ピッチP=円周率3.14xモジュール」で表され、モジュール1のピッチは3.14㎜となる。大きさは「基準円直径=歯数xピッチ」で表される。
歯形はインボリュート歯形が多く使用される。標準歯車は歯元がえぐられ弱いため、転位歯車と呼ばれる歯車の強度を上げる手法がある。
転位歯車(転位係数 x=+0.5)とすることによって、歯形が変わって歯厚が厚くなり外径(歯先円直径)も大きくなる。
歯車の精度はオーバーピン径で表示される。歯に入れる測定用のピン径が規定され、2本のピン間の寸法で公差を表示する。
歯車の仕様は歯形、転位、モジュール、圧力角、歯数、ピッチ、基準円直径、歯底円直径、歯先円直径、ピン径、オーバーピン径などを記載する。
□硬度例
中炭素鋼S45C | 合金鋼SCM440 | ||
熱処理なし | HB 194以下 | - | ― |
焼入れ焼戻し | HB 225~260 | HB 225~260 | 焼入850℃焼戻200℃ |
高周波焼き入れ | HRC 45~55 | HRC 45~60 | 硬化層深さ1~2㎜ |
ガス侵炭(肌焼鋼対象) | Hv800低炭素鋼S25C以下 | Hv800歪大 | 940℃x4H(0.2㎜) 940℃x20H(1.0㎜) |
ガス軟窒化 | Hv400~600低歪 | 600℃x2H(5μm)600℃x5H(20μm) |
材質は中炭素鋼S45C、クロムモリブデン鋼SCM440などが使用される。耐久性向上のため、各種熱処理(調質、浸炭焼入れ、ガス軟窒化、高周波焼入れ)やショットピーニングなどの表面硬化処理が行われる。
□表面処理
表面処理 | 膜厚μm | 硬度Hv | 長所 | 短所 |
三価電気亜鉛めっき | 5または8 | 100 | 耐塩水噴霧性 | 水素脆性リスク |
化学ニッケルめっき | 2~5 | 550 | 均一な被膜 | 耐塩水噴霧性 |
硬質化学ニッケルめっき | 10~20 | 1000 | 耐摩耗性 | |
黒染め(四三酸化鉄被膜) | 3 | 300~350 | 低コスト | 防錆力小 |
リン酸塩被膜 | 5~10 | 150 | 防錆力 | |
リン酸マンガン被膜 | 3~15 | 650 | 耐摩耗性 | |
WPCショット | 1~2μm寸法変化小 | 疲労強度向上 |
表面処理は三価電気亜鉛めっき、化学ニッケルめっき、黒染め、リン酸塩被膜、リン酸マンガン被膜、WPCショットなどが行われる。
方式
【軸】 | 【歯形状】 |
【平行軸】外歯、内歯、ラック | 平歯、はす歯(斜歯、ヘリカル)、やま歯 |
【交差軸】かさ歯 | すぐ歯、まがり歯(スパイラルベベルギヤ)、ゼロール歯 |
【食い違い軸】円筒ウォーム、鼓型ウォーム |
サイズ
3mm~300㎜
材質
中炭素鋼、合金鋼
工法
鍛造→旋削→内径スプラン/ブローチ加工→外歯歯切り→外歯面取り→シェービング→熱処理→ショットブラスト→内径研削→表面処理