マグネシウムダイカストの自動車部品への展開は少ない。これは、エンジン部品へは耐熱性不足で展開が難しく、また、単なる軽量化のための部品は、樹脂の繊維強化技術の進展でマグネシウム合金の採用も劣勢になっていることに起因している。用途としては、高級感の演出、電磁波シールドECU筐体など軽量化以外の機能が必要な部品で適用が増えている。
呼称はASTMとJISの両方の呼称があるが、ASTMの呼称が一般的。マグネシウムダイカスト材料の種類は少なく、AM60BなどAM系(Mg-Al-Mn) と、AZ91DなどAZ系(Mg-Al-Zn) の2系統。
自動車用ダイカスト部品としては靭性が高いAM60Bの使用が多い。
◆マグネシウムチクソモールド材質
工法面では小物部品ついてはマグネシウムダイカストに代わり、チクソモールド成形が増えている。マグネシウムダイカストの場合、火災対策に多大な設備コストがかかるが、材料を溶融させずに射出成形機を使用するチクソモールド成形では火災対策の設備コストが低減される。
内装部品に多く使用され、材質はダイカスト材料のAZ91Dが多い。
主なマグネシウムダイカスト材質、チクソモールド材質
材質 | ASTM JIS呼称 | AM(Mg-Al-Mn)系 AM60B MDC2B | AZ(Mg-Al-Zn)系 AZ91D MDC01D |
添加材 最大配合量% | Al:6.5 Mn:0.6 | Al:9.7 Zn:1.0 | |
加工法 | ダイカスト | ダイカスト チクソモールド | |
物性 N/mm2 | 引張 耐力 伸び% | 190~250 120~150 4~18 | 200~260 140~170 1~9 |
自動車部品例 | バックドア、 ハンドルコア、 ブレーキペダルなど | インパネパネル、 ECU筐体、 パドルスイッチなど | |
加工性 | 鋳造 | 〇 | ○ |
切削 | 〇 | 〇 | |
性能 | 強度 | 〇 | 〇 |
靭性 | ◎ | ||
耐食 | 〇 | ||
耐熱 | x | x |
市場で最も多く使用されている材料はAZ91DでAlを9.7%、Znを1%含み、機械的性質や鋳造性などバランスの取れた代表的な材料として販売されている。