モーター用永久磁石
モーター用永久磁石には汎用のフェライト系磁石と高価なネオジム強力磁石がある。
電動車の駆動モーターの形式は、永久磁石式同期モーターの埋め込み磁石形(IPM)と呼ばれる交流モーターの採用が多い。永久磁石とコイルが直流モーターとは逆に配置され、ローター側に永久磁石が使用され、機械的な安全性が高く高速回転に向いている。
この永久磁石式同期モーターには小型高出力化のため、高価なネオジム強力磁石が使用されているが、コストが数分の一であるフェライトに代替したモーターも市場に現れている。ただし磁力が1/3であり、磁石体格が大きくなるため、EV車では搭載できるが、ハイブリッド車では搭載は難しい。
磁石の作成方法は焼結磁石とボンド磁石の2種類に大別される。粉末冶金法によって作られる磁石を焼結磁石と呼び、磁気特性が高く耐熱性にも優れる。一方、樹脂等のバインダーと混ぜ合わせて射出成形機で成形される磁石をボンド磁石と呼ぶ。磁気特性や耐熱性は焼結磁石に劣るが、製品形状の自由度が高い。そのため、ローターへの磁石の埋め込みはU字型にするなどして形状による磁力の増強ができ、高価なネオジム磁石の減量でコストダウンが図れる。
ネオジム強力磁石はネオジム、鉄、ホウ素が主成分。ネオジム原料が高価で希少金属でさらに、原料産地が中国に限られ供給不安があるため、希土類金属不使用の強力磁石の研究が多く行われている。希土類金属の使用をゼロとする例も出てきた(例えばホンダ2016年~ )。磁石の製法を焼結法から急冷→破砕→押出成形する熱間加工法に変え、Nd-Fe-B結晶を微細化することで磁力を向上した。また、加熱すると突然磁力を失う欠点を補う、耐熱性向上の研究も行われている。
サイズ
300㎜~500㎜
構成
ネオジム強力磁石、ネオジム強力ボンド磁石、フェライト系磁石
□ネオジム強力磁石
材質:ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、ホウ素鉄酸化物粉末(B)
工法:焼結法
配合→混合→加圧プレス→焼結炉→粉砕(1μm)→加圧プレス→焼結炉→着磁
□ネオジム強力ボンド磁石
材質:ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、ホウ素鉄酸化物粉末(B)、樹脂
工法:射出成形法
配合→混合→射出成形→焼結炉→着磁
□フェライト系磁石
材質:鉄酸化物粉末、バリウム、ストロンチウム
工法:焼結法
配合→混合→加圧プレス→焼結炉→粉砕(1μm)→加圧プレス→焼結炉→着磁