電磁鋼板は、磁気特性に悪影響のある不純物(炭素、窒素、硫黄など)を極限まで低減し、ケイ素を加え、磁気的な性質を改良した鋼板。磁力線を通し易い特性を持つ。渦電流発熱損失を減少させるため、薄板に絶縁コーティングを施し積層して使用される。
EVモーターには「無方向性電磁鋼板 」が採用されるが、「無方向性電磁鋼板 」は成分と製法が工夫され、製法は社外秘となっている。
電磁鋼板の性能は、2つの磁気特性、「磁束密度」と「鉄損」で表現される。「磁束密度」は磁化のしやすさをあらわす指標で、磁束密度が高い材料ほど、高い磁力を得ることができ、「ハイパワー」が得られる。一方「鉄損」はエネルギー損失の大きさをあらわす指標で、鉄損が小さい材料ほど、エネルギー損失は小さくなり、「省エネルギー」となる。そのため、重視するのは「ハイパワーの磁束密度」か「省エネルギーの鉄損」かは、モーターの用途によって使い分けられる。
磁性材料の分類は、電流の向きを反転すると容易に磁化も反転する「軟質磁性材料」と、電流を切っても磁化を維持し続け永久磁石になる「硬質磁性材料」の2種類があり、電磁鋼板は「軟質磁性材料」に該当する。
また、電磁鋼板の種類には、「無方向性電磁鋼板」と「方向性電磁鋼板」の2種類があり、用途により使い分けられる。「無方向性電磁鋼板」 は全方向に平均的に磁気特性を有する鋼板で、主にモーターに使用されている。「方向性電磁鋼板 」は一方向(圧延方向)にのみ磁気特性を有する鋼板で、主に変圧器に使用される。
サイズ
300㎜~500㎜
材質
ケイ素添加鋼
工法
□無方向性電磁鋼板
転炉→連続鋳造→加熱炉→連続熱延→ホットコイル焼鈍→酸洗→冷間圧延→連続焼鈍→表面処理→スリッター
□方向性電磁鋼板
転炉→連続鋳造→加熱炉→連続熱延→ホットコイル焼鈍→酸洗→冷間圧延→連続焼鈍→バッチ焼鈍→表面処理→スリッター
方向性電磁鋼板では、冷間圧延後の連続焼鈍工程の後に「バッチ焼鈍」が入ることが大きな特徴。この段階での2次再結晶で特定方位を持った結晶だけを大きく成長させ、方向性をもたせる。