樹脂射出成形部品

樹脂射出成形部品

射出成形機は型締め力50トン~数千トンのサイズの成形機があり、小部品からダッシュボードのような大型部品まで対応できる。生産サイクルは20~45秒サイクルと速くはなく、小部品は多数個取りの型を作成し出来高を上げ、24時間稼働とし月産5万ショット程度まで一型で対応する。

欠点は、材料変えでは射出部スクリューの清掃をする必要があり段取りには時間がかかる。また、製品以外のランナーなどを一緒に成形しなければならないため材料歩留も悪い。対策として、バージン材だけでなくランナーなどの余剰部品を粉砕機で粉砕しバージン材に混合しながら生産することが多い。

型寿命はガラス繊維の入っていない一般の材料では100万ショット以上もつが、自動車用途ではガラス繊維の配合材料が多く金型が痛み寿命が極端に落ちる。射出部スクリューも劣化するため受注辞退する加工メーカーも多い。また自動車用途では金具をいっしょにモールドするインサート成形も多い。この場合竪型の成形機のほうが精度が良い。

画像は東海理化製ホイールカバー、エンブレム(射出成形品)。

サイズ

5㎜~2000㎜

構成

射出成形機、金型、材料供給装置(ホッパー、ドライヤー)、粉砕機(ランナー等がリサイクル可能な場合)

材質

<価格帯>

汎用プラスチック 100円~200円/㎏(コンテナ単位の大量購入時の商社卸価格)

エンプラ     ABS材比 2~3倍

準スーパーエンプラABS材比 4~6倍

スーパーエンプラ ABS材比 50~100倍

自動車用途 熱可塑性プラスチック(低価格順)

区分 略称 材質名 特徴 自動車部品適用例
汎用プラスチック PVC ポリ塩化ビニル(塩ビ) 安価 ビニールシート
  PS ポリスチレン 安価、透明性
  PP ポリプロピレン 比重0.9の最軽量材、自動車用の6割 バンパー
  PE ポリエチレン 繊維用途 シート
  ABS アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン 汎用材 ホイールキャップ
  PMMA アクリル 透明性、耐熱性 メーターカバー
  TPE エラストマー 疑似ゴム, エアーダクト
ブロー成形用はエンプラ並価格 CVJブーツ
エンプラ PET ポリエチレンテレフタレート GF-PET樹脂として使用、強度、寸法精度良好 ランプ周辺部品、ドアミラーステイ
  PPE ポリフェニレンエーテル アロイ材変性PPEとして使用、軽量で衝突時の形状回復性良好 フェンダー等外板
  PC ポリカーボネート 透明材、耐熱材 ヘッドライト
  POM ポリアセタール 白色材、摺動部材 ギア
  PA ポリアミド(ナイロン) 強化材 ラジエータータンク、エンジンカバー
  PBT ポリブチレンテレフタレート 電装部品用、絶縁性 イグニッションコイル、コネクター
準スーパーエンプラ PAR ポリアリレート 透明材、PCの黄化、耐熱改良材 リフレクターレンズ
  PPS ポリフェニレンサルファイド 難燃材、融点280℃ イグニッションコイル、コネクター
スーパーエンプラ PEEK ポリエーテルエーテルケトン 10,000円超/㎏ 高価材 シールリング
  PI ポリイミド PEEK材の2倍価格

工法

樹脂ペレット投入→  型締め →射出 →成形・冷却 →型開き →取り出し

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□インサート成形部品

インサート成形部品は、プラスチック射出成形における成形方法の一つで、金属インサート部品と樹脂が一体となった成形品。熱かしめや超音波溶着によって金属部品を後挿入する方法の代わりとなる。後挿入の方法に比べて強度があり、工程短縮によるコスト低減になる。

金属インサート部品と樹脂の間には化学結合はないため、インサート部品と樹脂のパーツは機械的に結合するよう、設計する必要がある。

射出成形機には一般的な横型のほか竪型があるが、インサート成形では、あらかじめインサート部品をセットしやすい竪型成形機が使用されることが多い。

構成:竪型射出成形機、インサート部品

材質:熱可塑性樹脂

工法: インサート部品セット→ 型締め →射出 →成形・冷却 →型開き →取り出し

 

二色成形部品

異なる2種類の樹脂を1つの成形品に1サイクル内で2回射出し熱融着させる技術。工程短縮によるコスト低減になる。

射出成形機も金型も共に特別な仕様となる。射出成形機は2本のノズルがあり、金型は1次側(1種類目の材料用)と2次側(2種類目の材料用)とから成り、金型は1次射出の後回転し、一次側の製品に対して2次射出を行う。

注意点は材料の選択で、異材の場合は融着しない組み合わせもあり、組み合わせには制限がある。また、化学的な結合ではあり、接着などの方法に比べて強度があるが、アンカーなど形状的な結合でも強化し、2つの部品を融着させることが推奨される。

構成:二色射出成形機(2ノズル)

材質:熱可塑性樹脂1~2材質

工法: 型締め →1次射出 →成形・冷却 →型開き→型回転→2次射出→成形・冷却 →型開き→取り出し

ガスアシスト成形部品

金型内に射出された加熱溶融させた樹脂に、直接窒素ガスなどの不活性ガスを注入し、中空構造の成形品を得る形状の自由度が高い成形方法。

ガスアシスト成形では樹脂の入り口とガスの入り口の2つがある。高圧の窒素ガスを注入し、内部からの圧力を均一に保つことで寸法精度が向上し、ヒケ・ソリ・変形等の不良を改善することができるので、自動車の外観部品に採用される。

樹脂の流動解析が複雑になるため、金型設計は経験とノウハウが必要となる。

□ダイスライドインジェクション(DSI)

DSI(DieSlide Injection)。中空体・積層構造体を射出成形技術。油圧機構によりスライドする金型構造を有し、金型が特別な仕様となる。

金型は1つで、左右に異形状のキャビティ(掘り込み)がある。1次射出で成形後、金型のスライドによって、製品を重ね、接合部に2次射出を行い金型内で組立を行う。金型から離型しないため、接合変形が少なく精度が良い。また振動溶着、超音波溶着よりも強度が高い。部品の削減と組立工程の取込みができるためコスト低減となる。

工法

型締め→左右キャビティーへ射出→成形・冷却 →型開き→ダイスライド→左右製品突合せ→型締め→接合用2次射出→成形・冷却 →型開き→取り出し

 

□インモールド成形

加飾技術。フィルムに印刷された意匠を射出成形の金型内に挟み込んで射出することにより、樹脂表面へ転写する成形方法。射出成形と同時に加飾することで、工程を大幅に減らすことができ、コスト低減が可能になる。

工法:

フィルムインサート(射出成形金型に挿入)→型締め→射出→成形・冷却 →型開き→取り出し

□フィルムインサート成形(IML)

加飾技術。印刷柄の入ったPCフィルムなどを真空成形でフォーミングし、射出成形型に入れ一体射出成形する工法。 複雑な三次元形状に対応でき、印刷フィルムにより、光沢・艶消し・パターン・柄などの表面加飾が自由に行うことができ、デザインの自由度が高い。インモールド成形よりも深絞りの製品の加飾に向いている。

 また、成形品の塗装・印刷など二次加工の省略でコスト低減となる。

 

工法:

<フィルム成形>

フィルム加熱軟化→真空成形(フィルム型)→フィルム加工トリミング

<射出成形>

成形済フィルムインサート(射出成形金型に挿入)→型締め→射出→成形・冷却 →型開き→取り出し

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