塗装の目的は装飾と耐食性向上。自動車で使用される塗装は静電塗装、カチオン電着塗装、粉体塗装、どぶ漬け塗装など。
静電塗装は対象物を帯電させ、そこに液体塗料を噴霧する。塗料の霧は逆の帯電で吸着させるので色ムラができにくいのが特徴。
カチオン電着塗装は電気メッキと同じ原理で、液体塗料を満たした浴槽内に沈め、直流電流を流すと塗料が表面に吸着する。色は黒色のみだが、耐食性に優れる特徴から足回り部品などに使用される。
粉体塗装は静電塗装と同じだが、塗料が粉体になる。吸着しなかった塗料の回収・再利用が容易であり材料歩留がよい。また有機溶剤を使用しないため、低公害性に優れる。
どぶ漬けはワークを塗料浴槽に浸漬する方法で、鋳物の防錆などで加工前に実施することが多い。
サイズ
10㎜~5000㎜
構成
静電塗装、カチオン電着塗装、粉体塗装、どぶ漬け塗装、焼き付け塗装、スプレー塗装
□自動車用塗装の種類
静電 | カチオン電着 | 粉体 | どぶ漬け | 焼付 | スプレー | |
ワーク | ボデイ | 足回り | 足回り | エンジン部品 | ボデイ補修 | ボデイ部分補修 |
下地処理 | 化成処理1μm | 化成処理1μm | 化成処理1μm | ― | ― | ― |
塗料 | 下:エポキシ中:ポリエステル
上:ポリエステル クリア:アクリル |
エポキシ | 高温硬化性塗料エポキシ系、ポリエステル系 | ラッカー油性アクリル水性 | メラミンアクリル | ラッカー油性アクリル水性 |
乾燥温度(℃) | 160~200 | 160~200 | 180~200 | 常温 | メラミン130
アクリル160 |
常温 |
時間(分) | 20~30 | 20~30 | 20 | 24時間 | メラミン20
アクリル30 |
24時間 |
厚さ( μm) | 110 | 15~35 | 30~150 | 50~150 | 10~30 | 15~30 |
長所 | 多彩な色調 | 膜厚管理容易 | 高温環境 | 常温乾燥 | 薄膜 | 常温乾燥 |
短所 | 黒色のみ | 薄膜不能種類少ない | 厚めの不均一膜厚 |
■静電塗装
自動車のボディ塗装には静電塗装が使用される。静電塗装は対象物を帯電させ液体塗料をエアーで噴霧する。塗料の霧は逆の帯電で吸着させるので色ムラができにくい。
スプレー塗装に比べて、塗料ミストの飛散を極力少なくしているが、塗装効率は60~70%程度だったが、近年、自動車メーカーラインで、エアーを使用せずに吹き出しヘッドの遠心力で塗布する静電塗装では塗布効率95%を達成している。
サイズ:10㎜~5000㎜
材質
ソリッドカラー | メタリック | |
全厚 | 91μm | 111μm |
化成被膜 | 1μm | 1μm |
下塗り | エポキシ20μm | エポキシ20μm |
中塗り | ポリエステル35μm | ポリエステル35μm
+アルミ粒子15μm +パールベース5μm |
上塗り | ポリエステルエナメル35μm | アクリルクリヤー35μm |
工法
前処理(湯洗→脱脂→水洗)→化成被膜下地処理(リン酸亜鉛皮膜→水洗)→水切乾燥炉→下塗り→中塗り→上塗り→焼付乾燥炉(160~200℃雰囲気で20~30分乾燥)
■カチオン電着塗装
エポキシ樹脂系塗料で表面がコーティングされるため、耐食性に優れる。足回り部品などに使用される。カチオン電着塗装は電気メッキと同じ原理で、液体塗料を満たした浴槽内に沈め、直流電流を流すと塗料が表面に吸着する。色は黒色のみ。
サイズ:10㎜~1000㎜
【膜厚】15~35μmの指定厚さ(浸漬時間管理で作成できる)
材質:エポキシ樹脂系塗料(黒色)
工法: 前処理(湯洗→脱脂→水洗)→化成被膜下地処理(リン酸亜鉛皮膜→水洗)→カチオン電着塗装層→水洗→焼付乾燥炉(160~200℃雰囲気で20~30分乾燥)
■粉体塗装
粉体塗装は静電塗装と同じだが、塗料が粉体になる。
長所は有機溶剤を使用しないため低公害。一回の塗布で膜厚が確保でき膜厚管理が容易。吸着しなかった塗料の回収・再利用が容易であり材料歩留がよい。
短所は焼付温度が高く、ワーク温度で180~200℃とより高温な乾燥炉が必要になる。30μm以下の薄膜は形成できない。塗料の種類が少ない。色変えの段取りに時間がかかる。電気代が高価など制約も多い。
サイズ:10㎜~1000㎜
【膜厚】30~150μmの指定厚さ、
材質:足回り:エポキシ系粉体塗料(耐食性は良好だが紫外線に弱い)
外装用:ポリエステル系粉体塗料(総合バランスがよい)
工法: 前処理(湯洗→脱脂→水洗)→化成被膜下地処理(リン酸亜鉛皮膜→水洗)→水切乾燥炉→粉体塗装ブース(ワーク温度で140~160℃)→焼付乾燥炉(ワーク温度で180~200℃x20分)
■どぶ漬け塗装
ワークを塗料の中に直接漬け込む塗装法。デッピング塗装とも呼ばれる。自動車の下回り部品や、エンジン部品など鋳物の鋳肌の保護用にも使用される。ダンパープリーなど、鋳物の状態で塗装したあと、機械加工する部品もある
ドブ漬け塗装の長所は内面など全体に塗料が行き渡る。短所は塗膜の厚みが均一にならないこと。
【膜厚】50~150μm。厚めの不均一膜厚。
材質:
ラッカー:油性:アクリル樹脂+有機溶剤+顔料
アクリル:水性:水溶性アクリル樹脂+水+顔料
工法:脱脂→どぶ漬け→(遠心分離機→)乾燥
■焼付塗装
焼付塗装は、焼き付けることで硬化する高温硬化タイプの塗料を使用する金属塗装。自然乾燥タイプの塗料を早く乾燥させるために高温で強制乾燥させることではない。
表面硬度が非常に硬くなることが特徴。薄めの塗装でも対候性は良好。焼付乾燥時間は、メラミン樹脂は130℃で20分、アクリル樹脂の場合は160℃で30分程度の加熱乾燥する。
サイズ:10㎜~1000㎜
【膜厚】10~30μm
材質:高温硬化塗料(メラミン樹脂、アクリル樹脂)
工法:脱脂→下塗り→上塗り→焼付乾燥炉(メラミン130℃x20分、アクリル160℃x30分)
■スプレー塗装
スプレーなどで手吹する塗装法。手吹塗装とも呼ばれる。自動車の修理などで使用する。溶剤は有機溶剤を使用するラッカー塗料と水を使用するアクリル塗料がある。
長所は、常温で硬化し、どんなものでも手軽に塗装できる。短所は冬場で24時間かかるものもあり乾燥時間が長いこと。
【膜厚】15~30μm
材質:
ラッカー:油性:アクリル樹脂+有機溶剤+顔料
アクリル:水性:水溶性アクリル樹脂+水+顔料
工法: ワーク磨き(耐水ペーパーなど)→脱脂→プライマースプレー→ラッカースプレー→ボカシ剤スプレー→クリアースプレー→乾燥